ステップG2:デザインと型紙の制作

 《1》 モールド選び
 組立て用モールド(型)には、下図のように様々な形があります。今回は、b.ロンド(半球)を用います。
 a.d. チューダー(円錐)
 b. ロンド(半球)
 c. コムソウ
 e. ヘルム
モールドの種類 展開平面
 ロンドは、展開図が複雑で、机上でのデザインは難しいのですが、 表面が球面なので、スランピングモールドを作りやすいという利点が有ります。 ただ、同じロンドを選ぶにしても、以下の点を重視してください。

@ 表面が真球面(半径が一定)に近いこと。
A 大きなものを選ぶこと。
 @の真球のものを選ぶと、このモールドを基にして自作するスランピングモールドも真球になります。 その結果、スランピングしたガラスは位置や方向性を選ばなくできるので、全体的に作業が楽になります(下図参照)。
 また、Aの大きなモールドを使うメリットは、スランピング時にガラスにシワがよりにくくなるという点が有ります。

モールドの種類
今回用いるモールドの形と寸法を下図に示します。
モールドを真横から見たところ モールドを斜め上から見たところ
 周上の280mmの寸法は、球面部分の長さです。 このモールドには下部にスカート状に円筒部があるのですが、今回はこの部分は用いません。 ですので、この280mmのエリアだけでデザインをすることになります。
 ※このコースで紹介したモールドは、残念ながら生産中止(廃番)になっています。 付記の「工具と消耗品一覧」では、これに近い形状のものを紹介しています。
 《2》 ラフデザイン
 今回のモチーフは里芋の葉です。
里芋畑
 スケッチブックにラフデザイン(概略デザイン)をします。今回は、里芋の葉を大胆に2色で配しました。 スランピングするので、1枚の葉を1ピースとしました。あまり細かいデザインにすると、スランピングの良さが出ません。
 赤い葉には葉脈をグリザイユで描き込みます。
 デザインするとき、着色に便利な色鉛筆 STAEDTLER社のKARAT AQUARELLを用いました。 これは、描いた後水を含んだ刷毛で撫でると、水彩絵の具のように溶ける色鉛筆です。
ラフデザイン ラフデザイン
 《3》 キャップ、ホイール、リング、ベース
 キャップとホイール、リングは、関脇コースで用いたものと同じです。
 @ キャップ:ワーデンキャップ・3インチ
 A リング:2と3/4インチ
 B ホイール:2と3/4インチ
 キャップ、ホイール、リング
 フロアベースは、洒落た鉄製の「鉄灯鉄美」というもので、全高150cmほどです。
 フロアベース
 《4》 ガラスの選定
 ガラスは2種類です。全てランバーツ社のアンティークガラスで、トランスペアレント(透明)です。 トランスペアレントはランプには不向きですので、オパック(半透明化)処理を施します。

(a) アンバー地に赤のストリーキー(流れ模様):おおよその使用量45×45cm
(b) クリア地に青と黄のストリーキー(流れ模様):おおよその使用量45×45cm

ガラス1 ガラス2
 では、ティファニーランプを作る時一般的に用いるオパールセントガラスは、今回の課題作に使用してはいけないのでしょうか。 実は、スランピングという熱処理が入るので注意が必要です。 リングモトルのほとんどは使用できないと思ってください。 高温でリング模様が消え、なおかつ透明度が落ちるガラスがあります。 単色のオパールセントやストリーキーガラスは使えるものがあります。
 また、アンティークのトランスペアレントガラスはスランピングに適していますが、 セレニウムカラー(黄色、オレンジ、朱を呈する)は、スランピングで色が薄くなりますので、注意が必要です。
 新たなガラスは、事前に小ピースをスランピングして変化の度合いを確かめてから使用を決めてください。
 《5》 型紙の制作
 今回は、球面でも有り、型紙に直に最終デザインを描き込むことにします。
 まず、トレーシングペーパーなどの薄い紙を帯状に切り、これを糊で繋ぎながら、モールドの表面を覆います。
 帯状の紙は16枚とし、糊代を5〜10mm設けて、下図のような帯を製図します。 また帯には、ところどころに水平線を書いておきます。
製図 帯を16枚切断
 この帯8枚をモールド上に放射状に貼ります。 これは仮止めですので、上端と下端にセロファンテープを付け、モールド上に固定します。 次に、帯の両辺に細く糊を付け、先ほどの放射状の帯の間に貼っていきます。

帯を放射状に仮止め 帯の両辺に糊を付ける
 このときは、紙同士を繋ぐのであって、紙がモールドにくっ付いてしまわないように糊のはみ出しには気をつけます。

帯を放射状に仮止め 帯の両辺に糊を付ける
 頂上には、リングを置いて、その外周を型紙にペンで写しておきます。

リングの外周線を描いておく
 このトレーシングペーパーの上に、最終デザインを描いていきます。 ラフスケッチを頼りに、まず鉛筆で下書きし、最後にマーカーで仕上げ描きします。 余分な下書き線を消し、改めて水平線を要所要所に描き込んでおきます。 この水平線は、後ほどガラスのストリーキーの流れ方向を水平に揃えるときに役立ちます。 ピースごとにアルファベットのガラス記号と通し番号を書いておきます。
 ピースの大きさは、大きくても縦横23cm以下にしておきます。 これは、ステップG5で詳しく説明しますが、この数値はシワ無くスランピングできる上限だからです。
 また、ピースごとに切断した後、最後にハンダ付けの段階でまた1枚に結合するのですが、 このとき隣接するピース同士の位置決めがし易いように、赤いマーカーで「合いマーク」を付けておきます。
 帯の接着が不十分で、離れそうならば、セロファンテープで補強しておきます。
最終デザインの描きこみ
 下図は、出来上がった最終デザインを4方位と頂上から見た図です。ガラス記号のAとCは赤ガラス、Bは青黄ガラスを表しています。
最終デザイン(前) 最終デザイン(右)
最終デザイン(後) 最終デザイン(左)
最終デザイン(上)
 最後に型紙を丁寧にモールドから剥がし、ピースごとに切り分けます。
型紙を丁寧にモールドから剥がし ピースごとの型紙

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